Kindle本『カテゴリ申請』の仕様変更と、予測の実現
Kindle作家への影響が大きい、「カテゴリ申請」の仕様変更
Kindle出版では、
「自分の本を、競合の弱いカテゴリに登録する」
という戦略があります。
Kindle本ストアには、「投資」「コンピュータ・IT」など無数のカテゴリがあります。
そして、どれか1つのカテゴリで1位を取得すると…
本の販売ページに【ベストセラー】という帯がつき、目立たせることができます。
しかし、競合の多い人気のカテゴリでは、1位になることが難しい。
したがって、出版数が少ないカテゴリを狙うことで、
「そのカテゴリ内での1位」
を獲れる確率が上がり、ベストセラーを獲得しやすくなるのです。
私が出しているKindle本『Kindle出版未来予測2023-2030』でも、この戦略について触れています。
通常、Kindle本を出す際には、2つのカテゴリを選択できます。ここで選択したカテゴリと、本の中身をもとに、Amazonによりカテゴリが決定されます。 しかし、出版後(または予約出版後)にAmazonの問い合わせフォームへ連絡することで、「合計10個までのカテゴリ申請」を行うことができるのです。(中略)掲載されるカテゴリが多いほど、人の目に触れる可能性が高くなる。競合の弱いカテゴリで1位になれば、「ベストセラー」を獲得できる。 もはや、「カテゴリ申請は、Kindle作家としてスタンダードな戦略」と言っても過言ではありません。
浅見陽輔『Kindle出版未来予測2023-2030』
この、Kindle作家にとっては注目度の高い、カテゴリ申請機能ですが…
2023年5月30日、Kindle出版の「カテゴリ申請」に関する仕様変更が発表されました。
2023年5月30日より、設定時に主なマーケットプレイスに基づいて、本ごとに3つの Amazon ストアのカテゴリーを選択できるようになります。独自にカテゴリーを選択していただけるようになったため、Amazon ではカテゴリーの追加または更新のご依頼は現在受け付けておりません。
Kindle Direct Publishingヘルプ『KDPのカテゴリー』
仕様変更をまとめると、以下のとおりです。
Kindle作家として、向き合いたいこと
今まで特に注目されていたのは、
- 問い合わせすることで、最大10個までのカテゴリに登録できる
という点。
そして、個別の問い合わせでカテゴリ申請が通るかどうかは、
「Amazonの担当者に大きく左右される」
という点はやや不公平感があり、ある意味抜け穴でもありました。
そんな中発表された、今回の仕様変更。
カテゴリ申請の個別対応が廃止され、今までの戦略が使えなくなりました。
ただ、この仕様変更は、ある意味で健全なのかもしれません。
これまでの仕様では、
「関連性の薄いカテゴリにもどんどん申請して、力技でベストセラーを獲る」
といったことも可能でした。
しかし今後、登録できるカテゴリが3つに絞られる。
そのため、このようなテクニカルな動きが難しくなります。
つまり、単純にクオリティが高く、人気の本でないとベストセラーが獲りにくくなったのです。
Kindle作家としては、ここは気持ちの切り替えどころなのかもしれません。
ベストセラーという、目立った実績は求めない。
「読者に価値を与える、クオリティの高い本を作る」
というKindle作家としての本来の役割が、より重要になっていくのではないでしょうか。
予測の実現と、当時からの大きな変化
…ところで、この仕様変更。
先ほど紹介した書籍『Kindle出版未来予測2023-2030』で、まさに私が予測していた内容でした。
(前略)しかし、現在のカテゴリ申請の仕組みは…とにかく、非効率的! Kindle作家が問い合わせフォームに連絡し、Amazonが1件1件メールを返す。さらに、Kindle作家は今後も増えていく一方。 こんな非効率なやり方が、いつまでも続くとは、到底思えません。
Kindle作家・Amazon側ともに負担の大きい、カテゴリ申請。現在は、問い合わせフォームからのみ申請できますが… 将来的には、「KDPの出版管理画面に、カテゴリ申請機能が追加されるのでは?」と考えています。
浅見陽輔『Kindle出版未来予測2023-2030』
当時の予測の根拠は、
- Kindle出版の参入者は右肩上がりに増加している。
- 「1件1件、カテゴリ申請を個別対応」という手間のかかるやり方は、今後も続くとは思えない。
というものでした。
とはいえ、Amazonの対応に時間はかかるだろうな…
と思い、実装時期は「2023年~2025年」という予測を立てていました。
しかし、この本を出版した当時から、大きく変化したことがあります。
それは、AIによって作られた本の乱立です。
ChatGPTを使って、超高速出版されたKindle本。
画像生成AIを使って作られた写真集。
AI技術をKindle出版に応用することで、ラクに出版する方法が編み出されました。
正確な数字は不明ですが、おそらくこの影響でKindle作品数が激増。
それに伴ってカテゴリ申請の問い合わせ数も増えた。
このような流れで、Amazonも早急に対応せざるを得なかったのではないか?
と、推察されます。
この動きを見ると、Amazonの対応スピードは、思ったより早そうです。
書籍『Kindle出版未来予測2023-2030』では、他にもいくつかの予測を立てています。
(ちなみに、8年分の予測を16万字の特大ボリュームで解説しています)
今回のように実現した予測だけでなく、「実現しなかった予測」についても今後答え合わせをしていきます。
- なぜ、予測が実現したのか?
- なぜ、予測が実現しなかったのか?
という考察もしっかり加えていこうと思いますので、楽しみにしていただければ嬉しいです。